うどんや風一夜

私は旅行に行った先で変わった薬局があると入るのが好きで薬剤師を名乗らずに色々見てしまうが、先日伊勢神宮に行った時、おかげ横町に古めかしい薬局がありフラッと入って店内を見ていると面白い薬があった。

時が止まったような薬局内には古くからある薬が所狭しとならんでいて、ドラッグストアとも調剤薬局とも全く違う雰囲気を醸し出していた。

その中に『うどんや風一夜薬』という変な名前の薬があり、なんだこりゃ?と思い薬剤師の習性で裏の成分を見た。非常に軽度な効果の解熱鎮痛薬と生薬が入っているもので、風邪の初期症状を改善する目的なんだなあと思いながら見ていると、なんと使用法には

『この薬はアツアツのうどんと一緒に服用してください 
そうするとかぜが早く治ります
だからうどんや風一夜薬というのです』

と書いてあるではないですか!

ちなみに、この薬は明治9年創業で大阪市東住吉区の(株)うどんや風一夜薬本舗で製造しているという。風邪の初期症状にはアツアツのうどんを食べ、この薬を飲んで一晩眠ることが一番だという考えにより、当時はうどん屋さんで販売されていたようだ。壷井栄著の「二十四の瞳」にも登場し、そば文化の関東では「そばや風一夜薬」として販売されていた経緯もなんとも興味深い。

自分でも漢方を調剤するので口頭で医食同源的なことを服薬指導したりすることはあったが、服用方法が「うどんと食え」とは、かなりステキな服用方法だなあと感心して思わず1つ下さいと言って買ってしまった。

漢方学上、人間はバランスの崩れから病になると考え、生体の自己免疫を意識するかどうかで効果はかなり違うわけだが、現在の医療用医薬品(Drの処方薬)の調剤での服薬指導にはこういった考えを意識して指導している薬剤師はほとんどいない現状であり、この薬が医療業界(特に保険医療)に対して投げかけていることは大きいと思う。(軽度医療の軽視と病理信仰によるマニュアル化という点で)

改めてグリーンメディックは軽度医療にこだわろうと思った。

(株)うどんや風一夜薬本舗